By nakamura, 5 7月, 2024

西條氏(さいでううぢ)は東京の人なり旧称(きうしよう)は河原崎(かはらさき)長十郎後(のち)に/権(ごん)十郎紫扇(しせん)と号(がう)す其実(そのじつ)歌舞伎俳優(かぶきはいゆう)の長(ちやう)七代目/団(だん)十郎寿海老人(じゆかいらうじん)の末子(ばつし)にして一度(ひとたび)狂言座(きやうげんざ)河原崎(かはらさき)/権(ごん)之助の養子(やうし)となり故(ゆえ)あって実家(じつか)を相続(さうぞく)し/九代目市川(いちかは)団十郎と改称(かいしよう)し俳号(はいがう)を三升(さんじやう)とし/人(ひと)呼(よ)んで団洲(だんしう)と称(しょう)す天資(てんし)悠然(いうぜん)小事(せうじ)に関(くわん)せず/容貌(かたち)簟瓢(たんぺう)の如(ごと)く巨眼(ごかん)光輝(くわうき)但見(たゞみ)る珠数(じゆす)の親玉(おやだま)に/似(に)たり先年(せんねん)猿若街(さるわかちやう)に在(あつ)て俳僧(はいそう)法蓮華庵(ほうれんげあん)永機(えいき)と/交(まじは)り頗(すこぶ)る俳道(はいたう)を得(え)たり又(また)花所(くわしよ)隣春翁(ちかはるおう)に学(まな)びて/画(くわ)を能(よ)くし手跡(しゆせき)も尋常(しんしやう)の俗筆(ぞくひつ)ならず時(とき)に/維新(ゆいしん)の機会(きくわい)に際(さい)し俳優道(はいいうだう)の旧習(きうしう)を一洗(せん)し/虚(きよ)を去(き)り実(じつ)を演(えん)ぜんことに只管(ひたすら)意匠(いしやう)を労(らう)じ劇場(けぢやう)/休業(きうげふ)の間(かん)あれば釣竿(ちやうかん)を携(たづさ)へて一葉(いちえふ)に乗(じよう)じ魚漁(ぎよりやう)/に托(たく)して枌且(いでたち)の工風(くふう)に他事(たじ)なきこと 彼(かの)呂望(りよはう)が/直針(ちよくしん)に於(おけ)るが如(ごと)し茲(こゝ)に田元帥(でんげんすい)河竹新(かわたけしん)七/老人(らうじん)坐元(ざもと)守田勘弥(もりたかんや)と計(はか)り従来(じうらい)劇場(けぢやう)/道(だう)の衰頽(おとろへ)たるを深(ふか)く嘆(だん)じ専(もつぱ)ら狂言(きやうげん)の/真(しん)なるに新硯(しんけん)を研(みが)くより団洲先生(だんしうせんせい)の/伎芸(きげい)非凡(ひぼん)なるより之(これ)を抜擢(ばつてき)して讃伎(さんぎ)/に任(にん)じ劇場(げきぢやう)の大将(たいしやう)とす先生(せんせい)身代(しんだい)窮(きう)して/志望(のぞみ)いよ〱堅(かた)く芸道(げいだう)の/進歩(しんぽ)も亦(また)少(すく)なからず/明治(めいじ)七年芝(しば)新堀座(しんぼりざ)/の太平記(たいへいき)には楠公(なんこう)/に扮(ふん)じて嗚(あゝ)呼感心(かんしん)/楠氏(なんし)の役(やく)と見物(けんぶつ)の/口碑(こうひ)にとどめ同九年/の夏(なつ)中村座(なかむらざ)において/頼氏(らいし)の日本外史(にほんぐわいし)中(ちう)治承年間(じじようねんかん)/平家(へいけ)の隆盛(りうせい)源氏(げんじ)の落魄(らくはく)を脚色(しぐみ)に/当(あた)り先生(せんせい)小松内府(こまつないふ)重盛(しげもり)に扮且(いでたち)/喝采(かつさい)全国(ぜんこく)に雷同(らいどう)し当今(たうこん)西南(せいなん)の/役(やく)をもって河竹翁(かはたけおう)新案(しんあん)の筆端(ひつたん)を/開(ひら)くに先生(せんせい)陸軍大将(りくぐんたいしやう)の任(にん)を模擬(もぎ)するに/今(いま)に於(おい)て鹿児島(かごしま)の事情(じじやう)を見(み)るが如(ごと)く/先生(せんせい)の人気(じんき)刻一刻(こくいつこく)より隆(さか)んに/愛顧(ひいき)日(ひ)一日よりふかく開場(かいぢやう)ならざること/見物(けんぶつ)霧島山(きりしまやま)をしのぎ土間(どま)桟敷(さじき)は/従軍(じうぐん)の雲霞(うんか)に異(こと)ならず左翼(さよく)に/岸野(きしの)武上(たけがみ)あり右翼(うよく)に簑原(みのはら)の/その他(た)あり大砲(たいはう)の当(あた)りはすさず/連戦(れんせん)の大勝利(だいしようり)は客歳(かくさい)賊徒(ぞくと)の敗軍(はいぐん)に/ひとしからず是(これ)将(はた)諸軍(しよぐん)(をつと)惣座中(そうざちう)/の奮発(ふんぱつ)によるといへども先生(せんせい)の一に/あり故(ゆえ)にこの小伝(せうてん)をもつて名誉新伎(めいよしんき)の/簡端(かんたん)に記(き)すいよ鹿児(かご)(ではない)/島原(しまはら)の親玉(おやだま)〱

資料集掲載番号
263
受入番号
1990-032-075
西南戦争錦絵判型
大判錦絵二枚続
作者
豊原国周
彫師
彫弥太刻
賛署名
筆者未詳
版元名
福田熊次郎
版元住所
長谷川町二十番地
届出日
明治十一年三月届出
左中右 上中下1
本紙1横
23.40
左中右 上中下2
本紙2竪
35.30
本紙2横
23.40
本紙1竪
35.30
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UUID
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