官平(くゎくん)と賊軍入(いり)みだれて戦(たたか)ふ最中(さいちう)彼(かの)／の剛勇(こうゆう)のきこへある桐野利秋(きりのとしあき)は汗(かん)／馬(ば)に鞭(むち)うち馳(は)せ来(きた)りたる有様(ありさま)は往(す)／昔(きし)川中嶋(かわなかじま)の戦(たた)かいに勇将輝虎(ゆうしゃうてるとら)大太刀(おおたち)／を振(ふるっ)て晴信(はるのぶ)が陣頭(ちんとう)に切入(きりいり)しにもさ／も似(に)たりすはやと云(い)ふ間(ま)に官兵(くわんべい)を／指揮(しき)されたる野津君(のづくん)へ近(ちか)づきて其(その)／肩先(かたさき)へ斬付(きりつけ)けたるになにかわそのた／勇(ゆう)を以(もっ)て之(これ)をころせば一時(じ)本陣(ほんじん)へ引(ひき)／返(かへ)される途中(とちう)にて村田君(むらたくん)に出逢(てあ)ひ／具(つぶ)さに事情(じしょう)を話(はな)されしに村田君(むらたくん)わ／憎(にく)き賊(ぞく)の挙動(ふるまい)かないでて余(よ)か英国(えいこく)／新製(しんせい)の射的銃(しゃてきしう)を以(もっ)て彼(かれ)を狙撃(そけき)せん／と馬(むま)を飛(とば)して逐(お)ひ付(つき)て撃(うた)れ／しに狙(ねら)ひ違(たが)はず砲聲(ほうせい)と共(とも)に／桐野(きりの)は馬(むま)より逆様(さかさま)に落(おち)たりしは実(けに)／に心地(ここち)よき次第(したい)なりしと／頃日(このころ)朝野(ちょうや)の余白(よはく)に見(み)へたり／うしの春／不日視岡閑人