池上(いけがみ)四郎は/鹿児島(かごしま)の士族(しぞく)/にして武勇(ぶゆう)の人(ひと)たり西郷(さいがう)と倶(とも)に熊本(くまもと)に/出張(しゅっちゃう)し一方(いつばう)の将(しやう)として各所(かくしょ)に戦(たゝか)ひ官兵(くゎんへい)と/抗撃(かうげき)せしも御舟(みふね)の敗走(やぶれ)に重痍(おもで)を負(お)ひ割腹(かっぷく)/して果(はて)しとぞ
桐野利秋(きりのとしあき)は鹿児島(かごしま)の人始(ひとはし)め/姓(せい)を中村(なかむら)という人(ひと)なり強壮(ごうそう)にして武(ぶ)に長(ちゃう)ず維新(いしん)の際(をり)/軍(ぐん)に従(したが)ひ屢々(しば〱)大功(たいこう)あるを以(も)て追々(おひ〱)登進(とうしん)し遂(つひ)に陸軍(りくぐん)/少将(せう〱)に挙(あげ)らる始(はじ)め西郷(さいがう)と其中(そのなか)和(くわ)せず征韓論(せいかんろん)発(おこ)りて/西郷と論(ろん)を同(おな)じうするを以(も)て無二(むに)の党(とう)となり隆盛(たかもり)職(しよく)を/辞る際(とき)倶(とも)に辞して帰国(きこく)なし遂(つひ)に今回(こたび)の暴動(ばうどう)に/及(およ)びしとぞ