西郷隆盛(さいがうたかもり) 先(さき)には維新(いしん)の元勲(ぐぇんくん)たり後(のち)には反(はん) 賊(ぞく)の首将(しゅしゃう)たり陸軍大将(りくぐんたいしゃう)の服(ふく)を 着(き)て官兵(くゎんぺい)と鋒(ほこさき)を接(まじ)ふ半生(はんせい)の功(くう) 業半生(げふはんせい)の罪悪共(ざいあくとも)に非常(ひじゃう)にして 古今(ここん)未曾有(みそう)たり古(いにしへ)の奸雄謂(かんいゆうい)へるこ とあり曰(いは)く大丈夫(だいぜいぶ)芳(はう)を百世(ひゃくせい)に流(なが)す こと能(あた)はざれば須(すべか)らく臭(しう)を千載(せんざい)に 遺(のこ)すべしと隆盛(たかもり)一身(いっしん)にしてこれを 兼(か)ねたり後(のち)の罪悪(ざいあく)や憎(にく)むべし前(まへ) の功業(こうげふ)は没(ぼっ)すべからずこれを要(えう) するに不世出(ふせいしゅつ)豪傑(がうけつ)の称(しょう)は史家(しか)の 此人(このひと)に与(あた)ふるを吝(おし)まざる所(ところ)なるべ し其(そ)の行事(ぎゃうじ)卓犖伝(たくらくつた)ふべきもの 多(おほ)し大率(おほむね)世(よ)に表著(へうちょ)す故(ゆえ)に一々(いち)載(の) せず性甚(せいはなは)だ猟(かり)を好(この)み軍中(ぐんちう)に在(あ)る の日(ひ)も徃々犬(わういぬ)を携(たづさ