By nakamura, 5 7月, 2024

散ればこそいとど目出た き桜島夫に助力といさ ましく薩摩そだちの 女武者花の笑顔に 引かへて襷きはち巻り ゝしく整装得もの携 さへ官軍と激戦なせし も数度なりしがある時 小舩にうち乗りて官舩 に近づきより数刻大ひ に戦ひけるとぞ   柳々子(落款)

By nakamura, 5 7月, 2024

鹿児島暴徒(ばうと)の其中に 一と際(きは)目立女隊(たい)のひと群(むれ) みどりの黒髪(くろかみ)ふりみだし 白布(しろぬの)の鉢巻(はちまき)なし紅(くれな)いの 襷(たすき)を綾(あや)とり薙刀(なきなた)打(うち)ふり はたらくさま最(いと)勇ゝ(ゆゝ) 敷見(しくみ)えたりと戦地(せんち)より 報知(ほうち)まゝを摸(うつ)して貴(き) 覧(らん)に備(そな)ふことしかり

By nakamura, 5 7月, 2024

鹿児島兵(かごしまへい)の中(うち)に女軍(にょぐん) 隊(たい)と号(がう)して五百人の女(にょ) 隊(たい)あり其(その)うち二十人は なぎ刀(なた)を携(たづさ)へ又(また)三十 名(めい)は長刀(てうとう)を帯(たい)せりと 年増(としま)は白(しろ)の股引(もゝひき)をは き新造(そう)は薄紅色の もゝ引(ひき)なりといふ此一説(このいっせつ) は真偽(しんき)さだかならざる 伝聞(てんふん)のまゝ録(ろく)す

By nakamura, 5 7月, 2024

唐土(こし)の石龍(りう)夫人わが朝 の巴はん額(がく)いづれも男(だん) 子(し)に憎れる勇あり 戊辰の年会津(あひづ)の役に女 隊ありしと聞及びしが 今般(こたび)鹿ごしま陣中に も勇婦数名交は り居り戦かひの機(き)を 計り緑りの髪を振 みたし長刀あるい小 太刀をふるて飛来(く)る 弾丸(たま)の下をくぐり秘 術を尽し激戦なす其 さま左(さ)ながら牡丹に狂ふ胡(こ) 蝶にも譬ふべし但し虚 実は保障しがたし    柳々子仙果記

By nakamura, 5 7月, 2024

西郷隆盛(さいがうたかもり)は川尻(かはしり)を本陣(ほんじん)と なし日夜軍事(にちやぐんじ)を儀(ぎ)し 三月一日に至(いたっ)て官軍大挙(たいきょ) し此(こゝ)所に進撃(しんけき)したりける が賊軍は之を聞(き)くより一軍 を以て伏兵(ふくへい)となし一軍は直(すく) に官軍と激戦(げきせん)し偽(いつは)り敗(はい)し て散乱(さんらん)し官軍短兵急(たんへいきう)に攻(せめ) 立(たて)しに伏兵(ふくへい)一同(どう)に起(おこ)り官兵大 苦戦(くせん)と成(なり)一先引上となるたり 西郷の手に女兵隊在(にょへいたいあり)といふ

By nakamura, 5 7月, 2024

紅花烟中(こうくわえんちう)に飛(と)び青柳風前(せいりうふうぜん)に櫛(くしげづ)る 翠黛蛾眉(すいたいがび)昨日(きのふ)縫裁(たちぬい)する掌(て)にて 今日(けふ)は白刃(しらは)を打振(うちふる)ふ心(こゝろ)も猛(たけ)き武夫(ものゝふ) の妻妾死(つましん)で逢(あ)ふ瀬(せ)を仮(かり)の夢(ゆめ)さ してよるベも白妙(しろたへ)の肌(はだ)さへ寒(さむ)き 春(はる)の夜(よ)に慣(なれ)し薩摩(さつま)の空(そら)たへて 親(おや)や我児(わがこ)に生別(いきわか)れ月日(つきひ)も長(なが)き 黒髪(くろかみ)を後(うしろ)の方(かた)へ結(むす)びつけ襷(たすき)十 字(じ)に綾千鳥白柄(あやちどりしらへ)の長刀振袖(なぎなたふりそで)の模(も) 様(やう)はいとゞ窕女(たをやめ)が夫(おっと)に隨(したが)ひ兄(あに)に 続(つゞ)き死(しね)ば共(とも)にと従軍(いでたち)は昔(むかし)の巴(ともへ) 板額(はんがく)もかくやと想(おも)ふ形粧(すがた)にて 紅粉隊(ふじんたい)の香(かほ)りは烈女節婦(れつじょせつふ)の名(な)と後(のちの) 世迄(よまで)も芳(かんばし)きに共(とも)に国賊(こくぞく)の名を免(まぬが)れ ぬ女の不幸(ふこう)嗚呼(あゝ)憐(あはれむ)べし又惜(おし)むべし

By nakamura, 5 7月, 2024

弥生(やよい)の空(そら)も春(はる)めきて 霞(かす)み棚引(たなびく)田原坂(たはらざか)二重(ふたへ) の峠(たうげ)や八重桜(やへざくら)盛(さか)り 短(みじ)かき賊(ぞくへい)兵(ぞくへい)は家族(かぞく)の 沸騰(ふっとう)女武者(をんなむしゃ)吉次峠(きちじたうげ)の 前後(ぜんご)に屯(たむろ)し奮発(ふんぱつ)な せしが勇(いさま)しく四方八方(しはうはっぱう) 進撃(しんげき)して夫(をっと)に劣(おと)らぬ 暴徒(ばうと)の激戦女隊(げきせんにょたい)は必(ひっ) 死(し)に奔走(ほんさう)なし実(げ)にも 頑固(ぐわんこ)の激婦(げきふ)といふらん   編纂     太夛□(金へんに常)誌

By nakamura, 5 7月, 2024
中根(なかね)米七(よねしち) 旧(もと)会津(あいづ)の町奉行(まちぶぎゃう)を勤(つと)む 戊辰(ぼしん)の年官軍 奥羽(おうう)進撃(しんげき)の際(とき) 軍(いくさ)奉行として数(す) 度(ど)官兵の大軍と 交戦(こうせん)なして利を失(うしな)ひし 事なし故に中根隊として 恐(おそ)るる程(ほど)なる老功の謀士(ばうし)なりし が去年永岡久茂の党(とう)に 加(くはゝ)り思案稿の失策(しっさく)より 辛(から)うじて其場を脱(だっ)し 九州 赴(おもむ)き薩(さつ) 兵(へい)の 隊将(たいしゃう)となれり 村田新八(むらたしんはち) 前陸軍(ぜんりくぐん)少佐(せうさ)を務(つと)しが才智(さいち) 勝(すぐ)れ文武(ふんぶ)の道にくら からず西郷が右の腕(うで)と 頼(たのま)れしほどの 英雄なり今回(こたび) の暴挙(ばうきょ)にも 二陣(ぢん)の副将(ふくしゃう)と 仰がれ数度(すど)の戦争に衆(しう)に秀(ひい)でし 働(はたら)きなし敵味方の耳目をおどろかせり 西郷小兵衛 陸軍中将西郷従道君(りくぐんちうしゃうさいがうよりみちくん)の直舎弟(ちきしゃてい) にして兄隆盛(あにたかもり)の気性を受て勇猛無双(ぶそう)且(かつ) 軍畧に長じたる壮士なり 篠原(しのはら)の手に属(しょく)し 一隊の司令(しれい)長た り木留(きどめ)山鹿の ぐん戦(せん