賊将西郷隆盛(ぞくしゃうさいがうたかもり)は二月 開戦以来(かいせんこのかた)諸所(しょ)に於(おい)て 官軍(くゎんぐん)と接戦(せっせん)なし漸々(しだい) に追撃(つひげき)され今(いま)は日向国(ひうがのくに) 都(みやこ)の城(じゃう)に楯篭(たてこも)り官兵(くゎんへい) 襲来(しうらい)あらば一戦(いっせん)に追退(おひしり)ぞ けんと嶮地(けんち)を憑(たの)みに手術(しゅじゅつ)を 尽(つく)し防禦(ばうぎょ)の准備(ようい)厳(げん)なる 折(をり)から大軍(たいぐん)四方(しはう)より攻撃(こうげき)あ れば奮戦(ふんせん)なすといへ共(ども)最早(もはや) 軍機(ぐんぎ)を失(うし)なひ支(さゝへ)ること能(あた)は すして此所(こゝ)をも逃走(とうそう)せしと云(いふ)