茲(こゝ)に佐土原旧知事(さとはらきうちじ)の三男(なん)に町田敬(まちだけい)二郎(らう)といふ壮年者(わかもの)あり/近傍(きんばう)の人小(こ)西郷(さいがう)と称(せう)して尊敬(そんけう)せり心猛勇(しんもうゆう)にして又(また)武芸(ふげい)/兵法(へいほう)に心(ごゝろ)を尽(づく)し文学(ぶんかく)にも暗(くら)からず才智(さいぢ)衆人(しうじん)に秀(ひい)でたり/鹿児島(かごしま)人暴発(ほうはつ)の模様(もやう)を知(し)るにおよび其身(そのみ)外山学校(とやまがくかう)に居(おられ)/しが一先(ひとまづ)帰国(きこく)して其実(そのじつ)を探(さぐ)り得(え)て時機(じき)によらば共力(きゃうりゃく)を合(あは)/んものと自(みつか)ら心決定(こゝろけつてい)し国(くに)に帰(かへ)りしば〱西郷(さいがう)らか動静(どうせい)を/うかがひしに鹿児島私学校(かごしましがくかう)の生徒(せいと)ら暴挙(ぼうぎょ)の色(いろ)を顕(あら)は/し二月十八日肥後路(ひごぢ)へ進発(しんばつ)せしと聞(きゝ)より町田は勇(いさ)み立延岡(たちのべおか)/佐土原等(とう)の士族(しぞく)三四百人を募(つの)り日向路(ひうがぢ)より進発(しんばつ)し直(ただ)ちに/西郷(さいがう)の陣営(ちんえい)に趣(赴カ)き其手(そのて)に加(くは)わらん事(こと)をのぞみしが西