偖(さて)も官軍(くわんぐん)は連戦打勝(れんせんうちかっ)て諸(しょ)口へ 進撃(しんげき)し当(あた)るを幸(さいは)ひ勇戦(ゆうせん)するに 賊(ぞく)も死憤(しふん)の勇(いさ)みをなし此処彼処(こゝかしこ)に 交戦(かうせん)せし中(なか)にも高瀬(たかせ)口より河(かは) 内通(ちとほ)りへ進軍(しんぐん)の際(きは)少佐(せうさ)連隊籏(れんたいき) を奪(うば)る時(とき)に官軍(くわんぐん)の中より野 津(づ)大佐(さ)これを見(み)て馬(うま)に鞭(むち)うち 真地暗(まっしくら)に敵(てき)中へ馳入遮(はせいりさへぎ)るものを 馬足(ばそく)にかけ数人(すにん)の敵(てき)を切(きっ)てすて難(なん) なく籏(はた)を取返(とりかへ)し徐々(しづ〱)と引(ひき)上しは最(いと) 目覚(ざま)しき 景況(ありさま)なり